『編集とは何か』奥野武範(ほぼ日刊イトイ新聞)取材・構成・文(星海社.2022)残日録221029

 ずいぶん読むのに時間がかかったように思うのは、連続して読了するエネルギーが生まれなかったのと、間々に雑誌を読んだり小説を読んだりしていたからからだ。そうなるにはワケがあって、収録インタビューされた編集者がそれぞれ個性的で圧倒されたからだった。一人ひとりの編集者からの熱量が私のなかで冷めていくのを待たないと、次の編集者のインタビュー記録にたどり着けないのだった。
 実家からの帰りに寄る居酒屋「あまや」で何度開いたことだろう。
 取り上げられた編集者は以下のとおり、

新谷学『文藝春秋』編集長 
石田栄吾『たくさんのふしぎ』編集長
津田淳子『デザインのひきだし』編集長
白石正明 医学書院『ケアをひらく』シリーズ
岩渕貞哉『美術手帖』総編集長
金城小百合『習慣ビックコミックスピリッツ』編集者
鈴木哲也『honeyee.com』創刊編集長
白戸直人 中公新書 前編集長
土井章史 トムズボックス代表
矢野優『新潮』編集長
姫野希美 赤々舎代表
久保雅一 小学館
新井敏記『SWITCH』編集長
河野通和 前ほぼ日の學校長
コラム 古矢徹『VOW』2代目総本部長
    薮下秀樹『VOW』シリーズ担当編集者
あとがきに代えて ターザン山本!『週刊プロレス』元編集長

 といった面々で、奥野氏の構成が良いこともあって、一人ひとりの編集体験を知り、ハッとさせられる。
 『たくさんのふしぎ』の石田栄吾氏の場合は(P63~67)、

――(以下、奥野)2019年9月号の「たくさんのふしぎ」は『一郎くんの写真』という作品で、これがもう……めちゃくちゃ感動的でした。
石田  ありがとうございます(笑)。
――出征してゆく兵隊さんに向けて、近所のみんなで寄せ書きをした「日章旗」を、第二次大戦当時、贈っていたと。で、」あるときに中央に「一郎くんへ」と書かれた日章旗が現代のアメリカで発見され、その「送られ主」である出征兵士・「一郎くん」とは誰なのか、寄せ書きした人の氏名などから探しあてたノンフィクションですけれども。
石田  はい。
――もともと東京新聞に連載されていたものを、石田さんが読んで、かいた記者さんに依頼して絵本にした‥‥‥。
石田  あの、人からよくあきれられるんですけど。
――はい。あきれられる?
石田  わたし、新聞が大好きなんです。新卒のときには、信濃毎日新聞の入社試験を受けたくらい、とくに地方紙が好きなんですが、読んでいるのも、昔から東京新聞でして。
――ええ。中日新聞社が発行する、関東の地方紙。
石田  横浜から巣鴨の青だの通勤電車の行き帰りも、ずーっと読んでいるんですが、今日は「2018年5月」の新聞なんです。
――……………えっ?
石田  はい、新聞が大好きなので、かならず毎日「隅から隅まで読む」んです。昔はきちんと、リアルタイムで、その日の新聞はその日のうちに読んでいたんですけれども、子どもができてバタバタしたりして、ちょっとづつちょっとづつ、遅れていって。
――え、えええーっ……(笑)。
石田  結局、いまは3年2ヶ月遅れで読んでいて。
――ホントだ……そんな人、はじめて(笑)。じゃあ、配達されたけど、まだ読んでいない新聞というものが……。
石田  
はい。わたしの部屋は、未読の新聞で埋まってます。

『一郎くんの写真』完成までの話があって、

――すごい……運命さえ感じます。でもまさしく編集者のお仕事だなあって、うかがっていて主負いました。新聞記事を絵本にしたわけじゃないですか。つまり、ある素材の伝え方を代えて、まったく別の読者に届けている……わけで。
石田  ええ。

 ほかにも引用したいけれどこれを写しておく。どれもが輝いていて、よい一冊に出会えた喜びを堪能している。

2022年10月30日