宮脇淳子の中国論ほか

藤原書店のPR誌「機」に宮脇氏の連載「歴史から中国を観る」がある。2020.08号はその3回目「一国二制度」から一部を紹介する。



 しかし、歴史上、中国が約束を守ったことがあっただろうか。

一九一一年十月、清の南部で辛亥革命が起きたよく一二年二月、生涯皇帝の称号を有して紫禁城で暮らしてもよい、という優待条件を袁世凱が示したので、清朝は中華民国に禅譲した。しかし、一九二四年最後の皇帝溥儀は、軍閥の一人馮玉祥のよって紫禁城から追い出される。

一九一五年、日本は南満州鉄道と関東州の租借期限の九九年延長を、袁世凱に認めさせた。ところが張学良は、袁世凱が結んだ「二十一カ条要求」は無効であるとして、国権回復運動を起こす。これが満州事変の原因となった。

これらは、他人の結んだ約束など、私には関係がない、という表明である。

鄧小平の「韜光養晦」(とうこうようかい;才覚を覆い隠して、時期を待つ)戦術は、中国が力をつけるまでの時間稼ぎにすぎなかった。力がついたいま、何をしようと勝手だ、というのが中国人のふつうの考えなのである。



1984年に中国とイギリスが調印した「50年間は一国二制度」が、香港返還23年目にして「香港国家安全維持法」施行された。今回の習近平の措置は約束違反であると西側世界は抗議している。このことについて書かれたものである。

宮脇氏には『かわいそうな歴史の国の中国人』『悲しい歴史の国の韓国人』『満州国から見た近現代史の真実』といった著作がある。

『かわいそうな歴史の国の中国人』は「歴史的にみれば中国という国すらない」「「中国」と「中国人」は20世紀に誕生した言葉」から始まり、「沈む船から一番先に逃げ出すのが中国人」までコラム風の歯切れのよい文章が並ぶ。

 2年ほど前、まちづくりセンターで「日本歴史入門講座」を数回開いた。関連で、ミニ授業書「焼肉と唐辛子」を取り上げ、朝鮮―韓国の歴史を学習したが、その時までに『悲しい歴史の国の韓国人』を読んでいたら、もっと話題を豊富に出来たことだろう。

『満州国から見た近現代史の真実』はいかに自身の滿洲像が浅薄なものであったかを思い知らされた

20200830

2021年01月09日